2014年9月15日月曜日

読み間違い


東京の代々木公園で蚊に刺された人たちがデング熱に罹り、その後各地で患者が増えているらしく、産経新聞に寄れば、9月13日現在、17都道府県で116人の患者が報告されているとのことである。本来は赤道付近の熱帯地方の風土病らしいが、今年は日本でも国内感染が発生して、当局は対策に大童である。

ウィキペディアの記述では、「デング(dengue)」の語源は明らかではないが、スペイン語「dengue」(引きつり・こわばり)が由来という説があり、デング熱に苦しんでいた西インド諸島の奴隷たちが、ダンディな(気取った)姿勢や歩き方をしていたと言われていて、「ダンディ熱(dandy fever)」とも呼ばれるようになった、とある。

老生はこのデング熱という言葉を目にするたびに、いつも「てんぐ熱」と読んでしまい、あの長い鼻を持った大目玉の赤ら顔の天狗のユーモラスな表情を思い浮かべて、つい心のうちで笑ってしまうのだ。蚊に刺され熱で顔が真っ赤になった天狗の戸惑いと苦しそうな表情に同情しつつも、笑ってしまうのである。退治が困難な病気に罹っている人に対して失笑するとはいかがなものか、との御叱りを受けるかもしれないが、決まってこうなるのである。

老生の読み間違いのもうひとつの例は、尾篭で恐縮だが、また発売元には失礼をお許し願いたいが、テレビ等でよく宣伝されている肝臓機能強化飲料の「ウコンの力」という商品名を「うんこのちから」と読んでしまうことだ。この商品を飲み、トイレでウンウンときばっている人物の姿を思い浮かべてしまうのである。一生懸命、腹の中のものを押し出そうともがいている様に同情しつつも、つい笑ってしまうのだ。先日も孫娘に「うんこのちから、と読んでしまった」と言ったら、即座に母親から「おじいさん、やめてください」と厳しく叱責されてしまい、苦笑いしながら、孫娘と顔を見合わせて首をすくめたのだった。

                                     (2014年9月15日記)

2014年9月10日水曜日

テレビ番組2題


普段、テレビは滅多に見ないのだが、この日曜の夜にたまたまスイッチを入れたところ、スペインサンティアゴ巡礼路を、杖を手にして喘ぎながら歩いている背の高い日本人の男の姿が画面に現れた。老生も2年前にこの路を歩いたことがあるので、懐かしくなってその時の記憶を探りながらしばらく見ているうちに、その男がある俳優によく似ているのに気づいた。その俳優の名は平幹二郎である。この男の姓も平、名は岳大といい、年齢は40歳というから平幹二郎の息子にちがいない。番組はちょうど半分を過ぎていて、巡礼路も後半に入っていたが、カメラはこの男のそばにぴったりとくっついて、顔面に苦痛の表情を浮かべながらひたすら歩き続ける姿を撮り続けていた。

これまで見てきたこの巡礼路に取材したいろんな番組の中で、この番組はもっとも巡礼者の現実に肉薄した上質のものと思われ、面白くて最後まで見続けた。平岳大が「巡礼路を歩くことについてついて何かを言わなければならないと思っていたのだけれど、そんなことは必要がなく、ひたすら歩くことがすべてなのだと思った」という趣旨のことを語ったのには心底共感を覚えた。これは老生もまた800キロ歩いて強く実感したことなのである。

見逃した前半部分はどんな内容だったのだろう。もし再放送があれば、是非もう一度通して見たいものだと思っている。

火曜日の夜にはいつも「酒とつまみと男と女」というBSの番組を見るのだが、これは出演者によって当たりはずれが大きく、今週はそのはずれの方だった。この番組のよしあしはもちろんメインの酔客如何によるところが大なのであるが、老生に言わせれば、この番組の主人公は実は不良隠居こと坂崎重盛であって、彼が出る日は面白いが、彼の姿が見えないとさっぱりなのである。酒を飲んで交わす言の葉にも、不良隠居の放つウィットと可愛げというものが大切で、むやみやたらに喚いたり酔っ払うだけでは品下るだけである。それとともに総じて酒場風景には男が馴染むものであって、女が出てくるといまひとつしまらなくなるのも不思議である。これまで見た中では嵐山光三郎がよかった。言うことに逐一味があり、不良隠居との呼吸もよろしくて、こんな酒場の邂逅ならば傍で一緒に杯を傾けてもいいなあ、と思った次第である。

                     (2014年9月10日記)

2014年9月8日月曜日

ハワイの土産


盆に家族でハワイへ出かけたN君から土産にラム酒を1瓶もらった。

ラム酒といえば、かのヘミングウェイがいたく好んだ酒で、ジャマイカとかプエルトリコとかキューバとか、カリブ海方面を中心に中南米で造られている酒と思っていたが、ハワイでも造られていたのである。カクテルベースに用いられることが多いらしいけれど、カクテルを飲みつけていない老生には縁の薄い酒である。どう飲んでよいのか分からないので封を切るのをためらっていたが、そのままオンザロックかソーダ割りで飲めばよろしいのでは、と思って昨日栓を抜いた。

ハワイ土産のラム酒
ラム酒にもいろんな種類があるようだが、この瓶は「GOLD」とラベルに大きく書かれてある。色は薄い琥珀色で、香りを嗅ぐとスピリッツ特有の鼻を刺す匂いがする。度数は40度とウィスキー程度なので、そう強いとも言えない。早速、一杯はストレートで、もう一杯はソーダ割で飲んでみた。殆どクセというものがない、スッピンの味わいである。ウォッカやマオタイ酒を飲んだときもこんな感じだった。

ラム酒を使ったカクテルでは「モヒート」というのが流行りだそうである。先日、BSで「酒とつまみと男と女」という番組を見ていたら、登場した酔客と不良隠居と聞き上手の3人が、とあるバーでこの「モヒート」を注文していた。どんなテイストなのか、そのうち一杯試してみなければなるまい。

近頃、デスクの下に常備しているのはシェリー酒で、食後に極少量、舐めるようにして味わっている。ペドロヒメネスという葡萄で造られた真っ黒でどろっとした濃厚な甘味酒だが、これが酒かしらん、と頭を傾げるほど猛烈に甘い。

世界には色んな酒があって、老生は諸事に憂き心を優しく愉しく慰めてもらっている。ありがたいことである。

                      (2014年9月8日記)