2014年9月10日水曜日

テレビ番組2題


普段、テレビは滅多に見ないのだが、この日曜の夜にたまたまスイッチを入れたところ、スペインサンティアゴ巡礼路を、杖を手にして喘ぎながら歩いている背の高い日本人の男の姿が画面に現れた。老生も2年前にこの路を歩いたことがあるので、懐かしくなってその時の記憶を探りながらしばらく見ているうちに、その男がある俳優によく似ているのに気づいた。その俳優の名は平幹二郎である。この男の姓も平、名は岳大といい、年齢は40歳というから平幹二郎の息子にちがいない。番組はちょうど半分を過ぎていて、巡礼路も後半に入っていたが、カメラはこの男のそばにぴったりとくっついて、顔面に苦痛の表情を浮かべながらひたすら歩き続ける姿を撮り続けていた。

これまで見てきたこの巡礼路に取材したいろんな番組の中で、この番組はもっとも巡礼者の現実に肉薄した上質のものと思われ、面白くて最後まで見続けた。平岳大が「巡礼路を歩くことについてついて何かを言わなければならないと思っていたのだけれど、そんなことは必要がなく、ひたすら歩くことがすべてなのだと思った」という趣旨のことを語ったのには心底共感を覚えた。これは老生もまた800キロ歩いて強く実感したことなのである。

見逃した前半部分はどんな内容だったのだろう。もし再放送があれば、是非もう一度通して見たいものだと思っている。

火曜日の夜にはいつも「酒とつまみと男と女」というBSの番組を見るのだが、これは出演者によって当たりはずれが大きく、今週はそのはずれの方だった。この番組のよしあしはもちろんメインの酔客如何によるところが大なのであるが、老生に言わせれば、この番組の主人公は実は不良隠居こと坂崎重盛であって、彼が出る日は面白いが、彼の姿が見えないとさっぱりなのである。酒を飲んで交わす言の葉にも、不良隠居の放つウィットと可愛げというものが大切で、むやみやたらに喚いたり酔っ払うだけでは品下るだけである。それとともに総じて酒場風景には男が馴染むものであって、女が出てくるといまひとつしまらなくなるのも不思議である。これまで見た中では嵐山光三郎がよかった。言うことに逐一味があり、不良隠居との呼吸もよろしくて、こんな酒場の邂逅ならば傍で一緒に杯を傾けてもいいなあ、と思った次第である。

                     (2014年9月10日記)

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