2014年8月19日火曜日

杉江弘「マレーシア航空機はなぜ消えた」を読む


今年の3月8日、深夜にクアラルンプールを発った北京行きのマレーシア航空MH370便が消息を絶っているというニュースが流れた。そして、その後しばらくの間、機体の所在について、マレーシア政府当局のプレスリリースを初め様々な情報がメディアを通じて流され、ネットでもいろんな推測や論議がかわされた。しかし、あれから半年近くなっても、依然機体の所在は不明である。

老生もこのニュースの不思議な奇妙さに興味を覚え、しばらくネット上の情報を追いかけたてみたが、最近の情報では、どうやら、オーストラリアの西部の町パースに近いインド洋上でマレーシア機の残骸らしきものが見つかったようだ。しかし、フライトレコーダーやボイスレコーダーなどは回収されておらず、原因は杳として不明のままである。

元日航の機長であった杉江氏は、この事故を事件性を帯びたものして捉え、自らの豊富な搭乗経験に基づいて、これまで得られた情報をもとに、様々な可能性を冒頭から章を追って検討し、それを次々に否定していく。本書の大部分は専門家の知見をフルに活かしてその否定の根拠を示すことに費やされ、一種の消去法により、その人物しかやりえないことを示して末尾の章の結論に至っている。

本書の内容はいわば犯罪推理であるから、ここでその結論を記すのは控えたい。ただ、それはネット情報を収集して老生が推測した結果と完全に一致していたので、「やはり、そうなのか」という驚きとともに、事故の悲劇を思えば不謹慎、との謗りを蒙るかもしれないけれど、犯人を当てることができた、という推理小説マニアの満足感をも覚えた。

  杉江弘「マレーシア航空機はなぜ消えた」講談社 2014年刊

                                                (2014年8月19日記)


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