2013年9月12日木曜日
フランクのヴァイオリンソナタを聴く
わがクラシックベスト3は「カルメン」、「トリスタンとイゾルデ」、そして「フランクのヴァイオリンソナタ」である。
前2曲はオペラなので、器楽曲としてはこのヴァイオリンソナタがベスト。
長い間、ティボーとコルトーが戦前に演奏した古いSPから復刻したCDで、この曲を聴いてきた。ティボーの内向きで渋い音色と、コルトーのゆっくりと引きずるようなポルタメントが実に魅力的で、この曲に溢れている優雅な気品と官能的で秘められた暗い情熱を余すところなく表現した見事な演奏である。ただモノラルの古い録音なので、現代の優れた録音であればどんな音が聴こえてくるか。
毎年、秋近くなるとこの曲を聴いてみたくなるのだが、急に思い立って昨夜、youtubeでこの曲の演奏を探していくつか聴いてみた。そのなかで、これは素晴らしいと感じたのは、イザベル・ファウストの演奏である。スターンやクレメル、レーピンなども同じくアップされているが、これらはどこか違う、という感じがする。
イザベル・ファウストの演奏で、第1楽章冒頭の、貴婦人がゆっくりと階段を登っていくような気配のする音の流れの秘めやかさ、その上昇が頂点に達したときの溢れ出るような音のきらめきを耳にして、これはいいと思った。しなやかで構築性のあるヴァイオリンの音の流れがこの曲の個性を鮮やかに描き出していて、2楽章、3楽章と、ぐんぐんと引きずり込まれていった。アーヴェンハウスのピアノとの掛け合いもよくて、4楽章の弾むような進行も一体感があって素晴らしかった。
イザベル・ファウストは南ドイツ生まれの41歳になる女流で、パガニーニコンクールで優勝、近年その実力が高く評価されている世界屈指のヴァイオリニストとネットで紹介されている。去年、来日して、N響と協演しているが、そのときは聴くことがなかった。思えば残念なことをしたものだ。私の好きなバルトークの演奏もCDで出ていて素晴らしいものらしい。
こうして、また新しい優れた奏者と出会えて、その演奏を楽しめる機会が増えたので、今朝はその嬉しさも一入である。
フランク バイオリン・ソナタ イ長調
バイオリン イザベル・ファウスト
ピアノ ジルケ・アーヴェンハウス 王子ホール(2007年11月12日収録)
(2013年9月12日記)
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